研究概要 |
本研究は、ジオキセタンの立体化学の履歴を反映したde novo(初めからの)カルボニルからの発光が起こっている可能性が高いアリール置換1,2-ジオキセタンの研究を通じて、このde novoカルボニルを分子レベルで調査し、ジオキセタン型化学発光のメカニズムのみならず、生物発光の色調変調メカニズムの解明に寄与することを目的とするものである。平成22年度ではピロリジン環の縮環した構造を有するアミノ置換ジオキセタン3種についてそれぞれの芳香環の回転障害に基づくsyn/anti異性体を単離し、その基礎的な発光特性を調べた。このアミノ置換体の回転異性体は、同一の分解物を与えるが発光効率に10~19倍の違いがあり、回転異性体の立体を保ったまま発光していると考えられる。溶液中の発光では生成する分解物が単一であることから固体状態で発光分解するジオキセタンの設計、合成が必要となる。CTID(電荷移動誘発分解)型ジオキセタンは通常、塩基溶液中で効率よく発光する。しかし本目的では結晶状態のまま加熱だけで効率良く発光するジオキセタンの創出が必要となる。このような目的に沿うものとして4-(ベンゾチアゾリル)-3-ヒドロキシフェニル置換ジオキセタンを見出した。このものは極性溶媒中、単なる加熱により効率よく発光することから、結晶状態での熱分解発光が期待できる。この溶媒促進分解(SPD)について熱力学特性を調べたところエントロピー制御型の反応であることを発見した。またビスナフトール置換ジオキセタンでも同一の分解物を与えるジアステレオマー間では、それぞれのジオキセタンの立体が保ったまま発光していると考えられ、より嵩高い置換様式となる2,2-ビスナフトール骨格の7位にジオキセタン環を有する化合物の合成を行い、基礎的な発光特性を調べた。
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