研究課題/領域番号 |
22550046
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
松本 正勝 神奈川大学, 理学部, 教授 (10260986)
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キーワード | de nodoカルボニル / ジオキセタン / 化学発光 / 化学励起 |
研究概要 |
本研究では、CTID(電荷移動誘発分解)型-ジオキセタンの分解を結晶状態で検討することにより、溶液状態では直接観測が困難なde novoカルボニルを結晶状態で固定し、ジオキセタン型化学発光のメカニズム解明、さらには生物発光の色調変調のメカニズム解明に寄与することを目的としている。この目的に合致するジオキセタンとしては、同一の分解物を与えるにもかかわらず、発光特性が異なる立体異性体の存在するジオキセタン(アミノ置換およびビスアリール置換ジオキセタン)と単なる熱分解でも効率のよい発光を示す4-(ベンゾチアゾリル)-3-ヒドロキシフェニル置換ジオキセタンが候補となる。平成23年度では、4-(ベンゾチアゾリル)-2-メチル-3-ヒドロキシフェニル基を有する新たなアミノ置換ジオキセタンの合成および理加纏異性体の単離を行い、その固体状態での分解および各種測定を行った。その結果、結晶状態での熱分解では一部異常分解が進行するが、syn/anti異性体間で異なる発光スペクトルを与え、それぞれの分解物と分解物標品との蛍光スペクトルが異なることを見出した。さらにアミノ置換ジオキセタンでは、そのN-位置換基のカルボニル基の配座によってもその発光特性が影響を受けることが新たに分かった。ビスアリール置換ジオキセタンでは、新たにオキセピン骨格を導入したジオキセタンを合成し、その基礎的な発光特性を調べた。また、ベンゾチアゾリル基の発光特性に及ぼす影響を調べるため、新たに2,5および6位にベンゾチアゾリル基を溝入した3-ヒドロキシフェニル置換ジオキセタンを合成し、その発光特性を調べた。その結果4位置換体に比較し、5および6置換体では発光種の蛍光量子収率の低下により発光効率の低下することがわかった。さらに2位置換体では化学励起に到らない全く新たな分解様式の存在することを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、目的を遂行するためのジオキセタンの選定が肝要であり、候補となるジオキセタン骨格に関して3系統での基礎的検討を進めて来た。その結果、それぞれの骨格での問題点を明確にした上で、新たな設計段階に到達している。また、予備的な検討ではあるが、ジオキセタンの個体状態での分解生成物と標品分解物での蛍光測定で異なる結果が観測されている。
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今後の研究の推進方策 |
これまで得られた結果を元に、目的を遂行するためのジオキセタン選定を早急に行なう。単なる熱分解で高い発光効率を示し、その発光種も高い蛍光量子収率を示す骨格である4-ベンゾアゾリル-3-ヒドロキシフェニル置換ジオキセタンについて、結晶状態での熱分解の特性、ジオキセタンおよび標品分解物の結晶性の両面から候補を絞り、de novoカルボニルの結晶状態での固定を行い、その観測を行なう。
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