研究概要 |
本研究は以下の二点を目的とする。1.ピラノース環を開かずにアキシアル・リッチなエラジタンニンを合成する。2.アキシアル・リッチ糖を利用した,新たな立体選択的グリコシル化反応を開発する。 1.エラジタンニン類は,多くの化合物が報告されているにもかかわらず,単離の困難さ,単離量の少なさが原因で,その生理活性が十分に調査されていない化合物群である。従って,化学合成による純品の供給が待たれている。エラジタンニンの全合成は,これまでにも例があるが,アキシアル・リッチな化合物の合成を達成したのは代表者のグループだけである。本研究では,以前報告した合成経路をより短縮し,エラジタンニン全合成の分野を,さらにリードすることを目的に,ダビジイン,及びフロシンを,短段階で全合成する。 2.糖鎖の化学合成に実用できる反応の種類が少ない。この問題に対し,実際に使えるグリコシル化反応を増やすアプローチとしてグルコースの3,6位に架橋基を有する糖供与体を用い,高いα選択性を示すグリコシル化反応の開発を行う。 研究は,全合成研究とグリコシル化反応開発に分けて行った。一方,両者の原料を共通化した。全合成研究では,2,4位にHHDP架橋を有するためアキシアル・リッチとなったエラジタンニンの初の全合成を試みたが,達成できなかった。2,4位でのHHDP架橋構築が想定したより難しかった事が原因である。この点に関しては,昨年度一年をかけて,ようやくその構築方法を開発した。グリコシル化反応に関しては,これまで用いてきたフッ化糖以外の脱離基を有する誘導体での反応開発に展開し,幾つかの脱離基の使用が可能であることを明らかにした。また,キシリレン架橋アキシアル・リッチ糖を用いた高α選択的グリコシル化反応を用いて,多糖化合物の合成を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アキシアル・リッチなエラジタンニン全合成に関しては,2,4位にHHDP架橋を構築することが想定したより難しく,その構築方法の開発に昨年度一年を要した。従って,2,4位にHHDP架橋を有するエラジタンニンを全合成する予定は遅れた。全合成は本年度に行う。一方,グリコシル化反応開発に関しては,概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
1.アキシアル・リッチなエラジタンニン全合成 1,3位にHHDP架橋を有するためアキシアル・リッチとなったエラジタンニンの初の全合成を行う。 2.グリコシル化反応 2.1 昨年度に引き続き,フッ化糖以外の脱離基を有する誘導体での反応開発に展開する。 2.2 3,6-o-キシリレン架橋を有するグルコースの量的供給法についてさらに検討するとともに,糖の種類を拡充する。
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