擬一次元構造を有する3元系金属リッチテルライドA-Ta-Te(A=磁性イオン)の固相反応で合成を試みた。このような組成をもつ化合物としてはLn_xNb_6Te_8(Ln=希土類元素)などが知られているが、得られた試料についてX線回折により生成相を調べたところ、今回合成を行った条件下では、類似の組成をもつ化合物が主相として得られた。しかしながら、副相として希土類オキシテルライドなども生成していた。目的相の結晶構造はタンタルにテルライドイオンが6配位し、TaTe_6八面体が面共有することで、一次元鎖を形成している。この一次元ネットワーク間に、一次元間隙が存在しており、Aイオンはこの間隙中に存在している。 得られた化合物について、電気伝導性、磁化、比熱測定を行い、希土類元素として反磁性のランタンを含む化合物では、金属的でPauli常磁性を示すことを明らかにするとともに、さらに、Rietveld解析によって得られた結晶構造パラメータを用いて電子構造計算も行った。希土類イオンがランタンの場合には、5Kで超伝導転移を示し、また、電子構造計算と比熱測定の比較から伝導電子間に弱い電子-電子 相互作用が働いていることが明らかにした。さらに、希土類元素として磁性をもつ化合物の場合には、いずれも電気伝導性はいずれも金属的挙動を示し、磁気的性質は1.8ケルビン以上でCurie常磁性を示すことが分かった。 さらに、電子構造計算より求まった電荷密度分布から、タンタル-テルル間、タンタル-タンタルの結合性について評価したところ、一次元鎖を形成しているTaTe_6八面体間には、Ta-Taに金属-金属結合が存在していることを明らかにした。
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