研究概要 |
以下に記す新規な14族元素配位子を有する錯体を合成し,それらの構造,動的挙動および反応性について研究した。 1)アセチリド-シリレン錯体とシラプロパルギル錯体に関する研究:アセチリド配位子上の置換基が第一級および第二級アルキル基の新規誘導体を合成し,結晶状態では錯体がアセチリド-シリレン構造を有することをX線結晶構造解析によって確認した。溶液中では,アセチリド-シリレン錯体とシラプロパルギル錯体の平衡混合物となり,置換基が嵩高いほどアセチリド-シリレン錯体の相対安定性が高くなることを明らかにした。また,これらの錯体とアセトンおよびメタノールとの反応を検討し,生成物の構造に及ぼす置換基効果についても明らかにした。 2)ヒドリド(アルケニルシリレン)錯体に関する研究:シリレン配位子上に嵩高い置換基を導入する速度論的安定化によって,塩基の配位していないヒドリド(アルケニルシリレン)タングステン錯体の合成を検討した。各種NMRスペクトルからその生成を確認したが,結晶として単離するには至らなかった。現在,さらに嵩高い置換基を導入した錯体の合成・単離を検討している。 3)金属-ケイ素-窒素三員環錯体に関する研究:前年度のシラアリルモリブデン錯体に関する研究で得られた,モリブデン,ケイ素および窒素からなる三員環構造を有する錯体とメタノールとの反応について研究し,ヒドリドおよびメトキシドの架橋した二核錯体が生成することを見出した。また,このような三員環錯体の汎用性の高い合成法として,アミノヒドロシラン類のSi-H結合活性化による方法を開発し,対応するタングステン錯体の合成にも成功した。
|
今後の研究の推進方策 |
アセチリド-シリレン錯体に関連する研究では,対応するゲルマニウム類縁体についても研究し,特異な結合様式を有する含高周期14族元素錯体の構造および反応性に関して比較研究を進める。また,ヒドリド(アルケニルシリレン)錯体については,X線結晶解析による構造決定と反応性の解明を目指す。
|