研究概要 |
本研究はフタロシアニンの骨格中心部(コア)を修飾した「コア修飾型フタロシアニン」を合成し,新しい錯形成能,熱特性,分光特性を見出すことを目的としたものである.平成22年度は大別して,2つのアプローチによるコア修飾を行った 1つ目のアプローチは,ピロールの窒素原子を炭素に置き換えた,いわゆる「カルバフタロシアニン」の合成であり,ジイミノイソインドリンとテトラブロモインダンとの反応により目的化合物の合成に成功した.この化合物はフタロシアニン類似の芳香族性,および分光特性を示す一方,フタロシアニンと比べてより高酸化状態の金属イオンを安定化することが明らかとなった.本研究により,はじめて芳香族性を有するコア修飾型のフタロシアニン誘導体の合成に成功したことは重要な成果である.2つ目のアプローチは,フタロシアニンコアに2つのアルコキシ基を付加することで芳香族性を失った誘導体の合成である.これはフタロニトリルをリチウムアルコキシド塩基存在下,穏やかな条件で反応させることにより,簡便,高収率で目的化合物の合成が可能となった.この化合物はフタロシアニンと異なり,有機溶媒に対する高い溶解性を示す.また,加熱により2つのアルコキシ基が脱離し,不溶性のフタロシアニンへと変換される.従って,この化合物を用いることで,有機薄膜太陽電池等への応用が可能な,塗布変換法によるフタロシアニン薄膜作製への簡便なアプローチが可能となった これらの成果は,コア修飾型フタロシアニンの芳香族錯体としての新規性と,アプリケーションへの潜在的有用性を示しており,本研究初年度の研究計画目標を高いレベルで達成したといえる
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