研究課題
銅(II)サレン型錯体の一電子酸化体を合成し、ジアミン部分のキレート効果の違いが電子構造ならびに、ベンジルアルコールの酸化反応に及ぼす影響について検討した。ジアミン部位が5員キレート環から6員キレート環へと変えることにより、一電子酸化体の基底状態は銅(III)種から銅(II)-フェノキシルラジカル種へと変化することが明らかとなった。この銅(II)-フェノキシルラジカル種はラジカル電子と銅イオンの不対電子間で強磁性相互作用していることが明らかとなった。また、フェノキシルラジカルは溶液中においても比較的局在化した状態であることが明らかとなった。これら異なる基底状態を有する一電子酸化体を用いベンジルアルコールの酸化反応について検討したところ、ともにベンジルアルコールと反応し、定量的にベンズアルデヒドが生成することを確認した。この反応は銅(II)サレン型錯体の一電子酸化体が一電子酸化剤としてはたらき、結果としてアルデヒド一分子あたり、2分子の一電子酸化体が必要となる反応であることを見出した。反応過程は銅(III)種、銅(II)-フェノキシルラジカル種ともに類似した活性化パラメータを示し、さらにベンジルアルコールの酸化反応の律速段階はともにベンジルアルコールのアルファ位の水素引き抜きであった。このことは、銅(III)種は室温付近で銅(II)-フェノキシルラジカルと平衡状態であることから、活性種、反応機構は類似であると考えられ、銅(II)-フェノキシルラジカルが活性種であると類推した。しかしながら、反応速度は大きく異なり、銅(II)-フェノキシルラジカル種の方がより活性であることが明らかとなった。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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