研究課題
研究代表者は、水素結合により自己会合したポリ酸アニオンの質量分析に世界に先駆けて成功した。その際に検出されたアニオン会合体の中に、アニオンの負電荷を上回る数のカチオンと結合することにより、正に帯電したイオン対として検出されたものが見られたことに着想を得て、イオン対形成が水素結合による弱い相互作用での分子会合を安定性化するという仮説を立てた。本研究は、デカバナジン酸をプローブとして、この仮説を検証することを目的とする。平成24年度においては、水素結合に関与するプロトン数を変化させたときの会合構造変化を解明するため、酢酸およびトリフルオロ酢酸を加えた系について、X線小角散乱および51V NMRを用いてデカバナジン酸の会合状態を検討した。X線小角散乱においては、散乱曲線から求めた回転半径を元に、51V NMRにおいては、これまでに蓄積した知見にもとづいてスペクトルを解釈することにより、デカバナジン酸の会合状態を推定した。その結果、トリフルオロ酢酸の場合には、デカバナジン酸に対しておよそ5倍量加えた時点で回転半径の変化が完了するのに対し、酢酸を用いた場合には回転半径の変化が完了するまでにデカバナジン酸に対しておよそ1500倍量を加える必要があることが明らかになった。また、変化後の回転半径は、アセトン-ジオキサン系において我々が過去に報告した単量体の値に比べて有意に大きかった。そこで、酢酸大過剰の条件下で結晶化を行ったところ、デカバナジン酸二量体に酢酸2分子が水素結合した複合体が、更に酢酸二分子により連結された無限鎖状構造が見いだされた。このような複合体の存在が、回転半径の違いに反映されていると考えられる。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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