研究課題/領域番号 |
22550057
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
野崎 浩一 富山大学, 大学院・理工学研究部, 教授 (20212128)
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研究分担者 |
岩村 宗高 富山大学, 大学院・理工学研究部, 講師 (60372942)
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キーワード | リン光 / 熱失活 / 活性化体積 / dd状態 / 無輻射失活 / ルテニウム錯体 / MLCT |
研究概要 |
1.時間相関単一光子計数システムの光検出器を、高速応答のMCP付光電子増倍管に人れ替えた。これにより本測定システムで決定できる発光寿命が40ピコ秒までとなり、大幅に性能向上した。 2.この発光寿命測定システムと前年度の研究で開発した高圧分光セルを用いて、さまざまなルテニウム(II)ポリピリジン錯体について、リン光状態がdd状態を経由して熱的失活する過程の活性化体積を決定した。その結果、ビピリジンなどのこ座配位子のトリス錯体は、ターピリジンなどの三座配位子のビス錯体に比べて、大きな活性化体積を示すことが明らかになった。この活性化体積は、熱的失活過程に関わるdd状態の分子構造についての情報を含んでいると考えられる。前者の錯体では、大きな距離の変化を伴うような四配位型構造のdd状態を経由し、後者では、コンパクトな三角両錐型構造のdd状態を経由して失活することを強く示唆している。これらの考察は、量子化学計算によるリン光状態の熱的失活過程の経路計算結果と一致している。 3.大きな活性化体積を伴うルテニウム(II)トリスビピリジン錯体の熱失活は、ゼオライトのようなかご分子の中に錯体を閉じこめることで、熱失活を抑制できることが知られているが、活性化体積の小さなターピリジン三座配位子の錯体に対しては有効ではない。量子化学計算による反応経路探査の結果、ビスターピリジン錯体の場合には、配位子のロッキングを防ぐような置換基を入れることによって、三角両錐型構造のdd状態の生成を抑えることができると予想した。実際にフィルムマトリックス中で、置換ビスターピリジン錯体の発光寿命を測定したところ、二桁程度も長寿命化することを見出した。 4.ユーロピウム(III)錯体が励起状態でアミノ酸と結合することで、錯体の構造が歪むことを、円偏光の測定により明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高圧を発生するための高圧ポンプにリークが発生したが、その修理はスイスのメーカしかできないため修理に時間がかかった。そのため高圧分光測定ができない期間が生じ、測定法の確立が遅れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
熱失活の速度論的パラメータの解析法は確立したので、比較的合成の容易な発光性のルテニウム、白金、パラジウム錯体について、測定・解析を行う。 高圧ポンプは半期に一度程度、高圧シールの入れ替え修理が必要なので、修理が国内で迅速にできるように、代理店に技術者の養成をお願いしている。
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