研究概要 |
平成23年度は前年度に引き続きアセチルCoA合成酵素とメチルCoM還元酵素のモデル研究を行った。アセチルCoA合成酵素モデルについては、テトラアニオン性のジアミドジチオラートmbpaをもつニッケル錯体とNi(PPh_2Me)_2(STip)(C_6F_5)との反応を検討し、酵素反応中間体モデルとなるニッケル二核錯体(nBu_4N)_2[Ni(mbpa)Ni(C_6F_5)(STip)]の合成に成功するとともに、その構造を初めてX線解析によって明らかにした(H_4mbpa=N,/N'-(3-mercapto-3-methylbutyryl)-O-phenylenediamine,Tip=2,4,6-triisopropylphenyl)。また、mbpa配位子のフェニレン架橋部位をエチレン架橋に変えたmbea配位子を合成し、同様の反応による二核ニッケルモデル錯体の合成を開始した。 メチルCoM還元酵素については、酵素活性中心のニッケルに配位しているコリノイドのモデルとして、酵素と同様に4つのNが平面で配位できるテトラアザマクロサイクルを選択し、これらのN上にメチルチオエーテル部位を導入した2種類の配位子を設計し、活性状態のモデルとなるニッケル(I)錯体を合成した。これらの錯体はいずれも分子内のMe-S結合をホモリティックに活性化し、メタンを与えることがわかった。そこで反応の詳細を明らかにすべくいくつかの検討を行った。メタンの由来を明らかにする目的で、チオエーテル上のメチル基を重水素化ラベルした錯体を合成し、同様に反応を行ったところCD_3Hの生成が確認され、Me-S切断によってメタンが生成することが確認された。またかさ高いチオール共存下ではメタンの収率が向上し、チオールがメタン生成の際のH源となることがわかった。
|