研究概要 |
前年度に引き続きアセチルCoA合成酵素のモデル研究を行うとともに、COデヒドロゲナーゼのモデル研究を開始した。アセチルCoA合成酵素モデルについては、テトラアニオン性のジアミドジチオラートmbpaを用い、反応中間体の構造モデル(nBu4N)2[Ni(mbpa)Ni(C6F5)(STip)構築にはすでに成功していたが、本錯体は反応性が乏しく、反応機構の解明には資さなかった。今年度は、mbpa配位子のフェニレン架橋部位をエチレン架橋に変えたmbea配位子を用いて同様に検討を行うとともに、反応に用いるニッケル前駆錯体を種々検討し、(nBu4N)2[Ni(mbea)]と(tmeda)NiMe(STip)との反応により、初めてメチル基とチオラートを併せ持つニッケル二核錯体(nBu4N)2[Ni(mbea)Ni(Me)(STip)]の合成に成功した(H4mbea = N,N’-(3-mercapto-3-methylbutyryl)-o-ethylenediamine, Tip = 2,4,6- triisopropylphenyl)。またX線構造解析による分子構造の同定を達成した。本錯体にCOを作用させたところ、酵素反応と同様にアセチルチオエステルMeC(O)STipの生成が進行することも明らかとなった。 COデヒドロゲナーゼ(CODH)のモデル研究にも取り組んだ。CODHの活性中心は複雑なクラスター構造をもつため、そのモデル構築は困難を極めたが、最近、[3Fe-4S]クラスターとNi/Fe錯体の反応から[NiFe3S4]クラスターの生成が示唆され、本研究課題での進展が多いに期待できる成果が得られた。
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