研究課題
生体内のヘモシアニンとチロシナーゼは、Type III銅と呼ばれる二核の銅中心を有し、酸素運搬や基質の酸化のために酸素分子と結合する。これまでに銅錯体によるモデル研究や蛋白質自身の結晶構造解析によって、これらは酸素分子が結合したμ-η^2:η^2-peroxo種を形成することが分かっている。最近、我々は安息香酸イオンで架橋された新しいμ-η^2:η^2-peroxo型の二核銅(II)錯体を合成することに成功し、このperoxo種とbis(μ-oxo)種の間の相互変換が、軸位の架橋カルボン酸である安息香酸イオンの配位と脱離により制御できることを初めて示した。これは生体内における0-0結合の開裂と形成の制御様式を強烈に示唆している。一方、この系はチロシナーゼと基質であるL-チロシンの反応における拮抗阻害剤として安息香酸が働くことと強く関連すると考えられる。そこで本研究では、二核銅-酸素錯体にチロシンモデルとなるフェノール誘導体が結合したperoxo種の生成を試みた。α-isosparteineの銅(I)錯体に-80度有機溶媒中で酸素を添加すると、まずbis(μ-oxo)種を形成するが、次いで電子吸引基を有するフェノール誘導体のリチウム塩を導入すると、μ-η^2:η^2-peroxo種に変化した。これは吸収スペクトル変化と共鳴ラマンスペクトルによって確認された。これは安息香酸イオンの場合と同じ変化であり、基質結合型のμ-η^2:η^2-peroxo種のモデル化合物の合成に成功したことが示された。この初年度の成果は、これはカルボン酸によるチロシナーゼの拮抗阻害メカニズムと、基質が結合したオキシ型チロシナーゼ-L-チロシン会合体の生成において、それらの反応メカニズムを解明するための重要な知見であると考えられる。
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