大気中へのCO2の排出削減は、人類にとって危急の課題であり、化学分野の担う役割が大きいことは言うまでもない。本研究では、CO2を炭素資源として化学変換する方法としてポリヒドリド金属錯体を使ってCO2をメタノールに変換することを目指した。本課題においては、新規に開発した大環状2核錯体を用いて、両金属上への水素の導入反応条件の検討、および生じるポリヒドリド錯体を用いたCO2との反応を調べることを第一の目標とした。第2にこの結果を踏まえて、触媒反応化のための条件検討を行った。第3に、これら基礎的データを基に配位子骨格の改良を行った。 大環状配位子の合成では、2つのフェロセンユニットが2つのリンを2重に架橋したジホスフィンユニットを合成し、このジホスフィンユニとどうしをビスフェノールAで2:2の環化反応により連結する方法で大環状配位子を得た。ここへ導入する金属として、白金錯体を合成したが、残念ながら白金錯体ヒドリド錯体の熱的安定性が不足しており、金属を11族に変えることにした。Cu(I)を導入する方法として、Striker試薬(Ph3PCuH)による配位子交換反応と酢酸銅(II)を環内に導入後HSi(OEt)3で還元する方法を試したところ、後者の方が簡便で効率よく銅ヒドリドへ誘導できることが判った。そこで、この錯体を触媒として用い、ヒドリド源としてHSi(OEt)3を利用してCO2の還元を行った。触媒を0.5mol%用いた結果、1H NMR 及びGC-MS測定によりHSi(OEt)3に対して収率66%でHCOOSi(OEt)3が還元生成物として得られた。主生成物は、ギ酸誘導体であったが、期待したメトキシ化合物は、こん跡量ながら生成していることも確認された。
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