研究課題/領域番号 |
22550062
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
山口 素夫 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (60174637)
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研究分担者 |
佐藤 潔 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 准教授 (40285101)
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キーワード | ルテニウム錯体 / 二核錯体 / 光配位子置換反応 / 酸化還元スイッチ / オンオフ制御 |
研究概要 |
ルテニウム錯体の光反応の研究において,我々はすでにルテニウム錯体の配位子に酸化還元スイッチとしてベンゾキノン-ヒドロキノン部位を導入し、配位子光解離反応のオンオフ制御に成功し,さらに二核錯体から単核錯体への可逆的光解離反応を利用したフォトクロミズムを実現している。そこでこれらを統合しで,酸化還元スイッチを有する新規な光機能性ルテニウム二核錯体の合成とフォトクロミズムの制御をめざしている. 今年度はベンゾキノン-ヒドロキノン部位を導入した配位子を用いてピラジン架橋二核錯体を合成し、可視光照射による架橋配位子の選択的解離反応の制御を目指して研究を行った。まず単核ピラジン錯体を合成し、可視光照射によるピラジンの光置換反応を検討したところ、ベンゾキノン体ではヒドロキノン体に比べ反応速度が約15分の1に低下し、酸化還元スイッチによる光置換反応の制御に成功した。つぎに二核錯体における架橋配位子の選択的光解離反応の制御の検討を行った。ヒドロキノン体は溶媒のアセトンへの溶解度が低かったため替わりにジメトキシフェニル基を導入した錯体を用い、これとベンゾキノン体の比較を行ったところ、ベンゾキノン体ではジメトキシフェニル体に比べ反応速度は約6分の1に低下した。以上の結果より、ピラジン架橋ルテニウム二核錯体の架橋配位子の光解離反応を酸化還元スイッチにより制御する可能性が示唆された。今後さらに置換基を導入することで溶解性を改善し、また逆反応である二核錯体再生反応について検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定通り、ベンゾキノン、ヒドロキノン、ジメトキシフェニルの各部位を三座配位子ターピリジンに導入したピラジン架橋ルテニウム二核錯体を合成したが、ヒドロキノン体は溶解度が低く配位子光置換反応の速度を正確に測定できなかった。しかしベンゾキノン体とジメトキシフェニル体の比較ではベンゾキノンによる光反応の抑制効果が確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、ヒドロキノン部位を有する二核錯体の溶解度を高めるためアルキル基を導入するなどの分子設計を行い、目的錯体を合成してフォトクロミズムのスイッチングについて検証を行う。さらに、二核錯体のユニットとなるルテニウム錯体を共有結合で連結したより効率的なフォトクロミック特性をもつルテニウム二核錯体を設計・合成して目的を達成する。また三座配位子ターピリジンを有する錯体は光置換反応の量子収率が低いため、より高い量子収率を示すことを今年度に見出した三座配位子トリス(ピラゾリル)メタンを有する錯体についても同様の検討を進める。
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