研究概要 |
第一遷移金属の酸化還元活性化はtptm (tris(2-pyridyltho)methanide) と称するトリポッドを用いて行ってき たが、tptmの配位座を一部改良し、より安定な配位子を作成する事によって、この錯体と還元型第一遷移金属錯体の合成を試みた。具体的にはppte (1-pyridine-2-yl-2,2-bis(pyridine-2-ylthio)ethanoneを用いた。この配位子は脱プロトンして、カルバニオンとなる中心の炭素にケトピリジンが置換基として配置されている。この為にトリポッド型の配位子の安定性が格段に向上した。様々な錯体で、M(II)/M(III)の酸化が正側にシフトするとわかった。ppte配位子は, 金属イオンにケト型あるいはエノール型で配位する.Fe(II)に対しては[Fe(ppte-keto)(ppte-enol)]の様に配位すると低スピンに、[Fe(ppte)Cl]2のように配位すると低スピン型になる.このときにppteはケト型とエノール型の中間となっている.[Zn(ppte)Cl]ではtptm錯体(3角両錐)と異なり複核で、Zn 周りはより6配位8面体型に近くなっている.このときZn-Cは2.38Åとかなり長くなり、ケト、エノールの中間的な値となっている.この為、錯体の安定性は低下し、更なる反応への利用は困難とわかった. Ni(II)に配位させる事によって、新たな反応性を見いだす事を試みた.この場合、[Ni(tptm)X]2 同様に2量体構造をとる.電気化学、あるいは化学酸化の振る舞いは異なっており、ステップワイズな段階的な2電子酸化を行った.そこで、トリス(パラトルイル)アミニウムPF6で酸化する事によって、混合原子価状態で有るNi(II)Ni(III)錯体やNi(III)2錯体を単離合成する事ができた.
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