研究概要 |
新規分子磁性化合物となるような二核、少数核及び多核金属錯体の磁気特性を調べた。 マクロ環に4個のシッフ塩基ペンダントを取り付けた配位子を合成し、銅塩と反応させて新規銅(II)錯体を合成した。主に二核錯体が得られたが、メトキシ基を導入したものでは六核錯体が単離でき、その構造を明らかにした。磁気特性は二核錯体においてほとんど相互作用がなく、六核錯体では強磁性的相互作用も考えられるような挙動であることが判明した。その他ジシアナミドを架橋基とする二核及び多核銅(II)錯体、フェノキソ架橋の二核銅(II)錯体、ピラゾール架橋多核銅(II)錯体の磁気特性を調べた。いずれも磁気的相互作用は弱く、また磁気異方性は小さかった。 安息香酸ルテニウムの3,4,5-位に長鎖アルキル基を導入し、これをクロロでつないだ鎖状錯体を合成し、磁気特性を調べた。反強磁性的相互作用が見られ磁気異方性によるゼロ磁場分裂の効果も観測された。長鎖アルキル基の導入による液晶性の発現に成功した。この系は有機溶媒に可溶でNMRによる溶液中の磁気特性も調べた。S=3/2のスピン状態を保持し、二核あるいはオリゴマーで存在していることがわかった。 フェノキソ架橋の二核ニッケル(II)錯体の磁気特性を調べた。反強磁性的相互作用が観測されたが磁気異方性は観測されなかった。コバルト錯体ではアルコキソ酸素架橋の有機配位子とコバルト塩の反応によって三核や四核のコバルト錯体が生成する合成条件を見出した。結晶構造も明らかにした。磁気特性は概ね反強磁性的であるが詳しくは調査中である。
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