研究課題/領域番号 |
22550066
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
御厨 正博 関西学院大学, 理工学部, 教授 (10157472)
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キーワード | 分子磁性 / 磁気異方性 / 金属錯体 / ルテニウム / コバルト / ニッケル / 二核錯体 / 多核錯体 |
研究概要 |
コバルトでは、磁気異方性の強いコバルト二核錯体について偏極中性子回折実験から2個のコバルトの誘起磁気モーメントが主軸の傾きのずれと一致することが見出され、この錯体の異常な磁気異方性挙動の原因が明らかにされ、分子磁性化合物で磁気異方性の解析法が適用された初めての例となった。三核や四核錯体では合成条件の検討中、新たに六核錯体も単離でき、結晶構造を明らかにした。この系では強磁性的相互作用が見出され、詳細な検討を行っている所である。 ルテニウムでは、ピバル酸ルテニウムとオクタシアノタングステン酸との多核錯体について磁気特性を詳細に調べた。一元集積化合物では極低温で反強磁性的な相互作用が見られたが、二次元集積化合物ではフェリ磁性的相互作用が観測され、キュリー温度が44Kであることが判明した。保持力は5Kで5600エルステッドと比較的大きく、この系は磁気材料としても注目される。酢酸ルテニウムとヘキサシアノニッケル酸との反応から新規の一次元集積多核錯体を得る事ができた。異核金属間には弱い反強磁性的相互作用が観測された。 ニッケルでは、二核で磁気異方性が重要な働きをしていると期待できる系の合成法を確立し、多核集積化への足がかりをつくった。 十四核マンガン錯体や八核鉄錯体の磁気特性を明らかにした。磁気特性は概ね反強磁性的である。 その他、ロジウム二核の集積型多核錯体について結晶構造を明らかにし、いくつかの錯体ではホール構造が見出され、窒素ガス吸着現象が観測された。磁気特性は反磁性であるが、集積構造を検討するにあたって重要なデータが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画にたくさん挙げた項目の中で一部を除くとそれぞれの項目について概ね確実に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の発展的展望段階で挙げたキラルな特性の導入については、実際に行ってみると予想していたよりもはるかに困難であり、達成するにはかなりの時間を要する事が判明したので、今後は、磁気異方性に関してより重要である希土類元素の錯体の合成に力点を置いて行くことにする。
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