本研究は、材料化学において改めて注目されている一次元性階層構造を、DNAに倣った多重水素結合を埋め込んだ無機-有機複合モジュールをビルディングブロックとして構築する物質創製研究である。特殊な水素結合を組み込んだ階層構造の相互作用系研究は現在までほとんど知られていない。そこで本研究では、上記多重水素結合金属錯体-有機物モジュールを用いて一次元性階層構造を構築する。さらに、得られた低次元性物質の物性を検討するとともに、集積体の酸化還元を行うことで電導性と水素結合の量子融解状態を発現させ、電子移動とプロトン移動がカップルした多重機能を発現する素子の構築を目指す。 本年度は、テトラヒドロジオキソピラジンジカルボニトリル(H_2tdpd)を配位子とする金属錯体と特異的な酸化還元特性をもつ機能性置換基を導入したメラミン誘導体をパートナーとして得られる、AAA-DDDあるいはAAAA-DDDD多重水素結合により繋がれた金属錯体-有機物ハイブリッドモジュールを用いて、一次元階層構造を構築した。これらモジュールは、平面性が高く、上下の配位座が空いているため、配位結合、スタッキングにより集積(積層)していた。そこで、これら複合モジュールを用い、金属錯体とパートナーの特殊な酸化状態を達成するために電解合成により"ポリメリック"な集積化を検討した。得られた一次元階層構造のIR、ラマン分光測定等を行い、多重水素結合のキャラクタリゼーションを行った。
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