研究概要 |
クロマトグラフィーや触媒等で用いられる多孔性材料の開発,機能解明にメソ細孔内物質移動過程の研究は重要である。本研究ではメソ細孔内物質移動に及ぼす細孔直径(d_p)と同程度の電気二重層の厚み効果,分子サイズ効果を明らかにするため,微粒子操作法と顕微吸光法,共焦点顕微蛍光法を組み合わせた手法で,単一微粒子ごとに速度論的解析を行った。 単一微粒子を試料溶液にインジェクションし,共焦点顕微蛍光法で単一粒子内物質移動過程の解析を可能とした。この共焦点顕微蛍光法の性能評価は,既に顕微吸収測定から細孔内物質移動過程のわかったローダミン6G水溶液中にマイクロメートルサイズの単一球状シリカゲル粒子を添加した系で行った。この粒子の細孔(d_p=6.5nm)内にローダミン6Gが細孔内拡散律速で収着する過程を,粒子の中心を通る深さ方向の蛍光強度プロファイルの経時変化として測定し,デジタルシミュレーションでこの経時変化を解析するプログラムを作成し,顕微吸収測定から求めた拡散係数と一致することを確認した。また,デコンボルーションすることにより1μm程度の空間分解能で蛍光分布を議論できるようになった。さらに,d_pと同程度の大きさの酵素のシリカゲル細孔内物質移動を検討した。蛍光プローブで標識した酵素を用い,イオン強度の高い条件で粒子内の酵素濃度分布を決定した。酵素のような高分子では,シャーレの底に沈んだシリカゲルでは,下方からの物質供給効率が悪いことがわかり,解析は球状粒子の上方半分で行った。深さ方向に空間分解能を持たない顕微吸収測定では,レーザーマニピュレーション法で粒子を水相内に捕捉して行う必要性がわかった。
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