研究概要 |
(1)アルキルベンゼン類をπ配位子,2,3-ピリジンジオラート(pyO_2^<2->)を架橋配位子とする一連の環状Ru三核錯体[(alkylbenzene)Ru(pyO_2)]_3を合成した。これらの錯体(L)を溶かしたジクロロメタン溶液によって水中のアルカリ金属ピクリン酸塩(MA:M=Li^+,Na^+;A^-=ピクラートイオン)の抽出を行った。抽出速度は一般に遅く,平衡基到達までに24h以上を要するものもあった。平衡解析の結果,アルカリ金属イオンはMLAの三元体として抽出されることが示された。また,いずれの錯体もLi^+に対して高い的も了選択性を示し,[(1,3,5-トリメチルベンゼン)Ru(pyO_2)]_3ではLi/Na間の分離係数が1.7×10^3であった。これは,従来のリチウム選択性クラウエーテルを大きく凌ぐ選択性である。錯体の立体構造・電子構造をDFT計算によって評価し,π配位子のアルキル基による立体効果が,高いLi^+選択性に寄与していることを明らかにした。 (1)上記錯体のπ配位子に配位性官能基(メトキシ基)を導入した新規錯体を合成した。これらの錯体はアルカリ金属塩をMLA及びML_2Aの化学形で有機溶媒に抽出し,[(アルキルベンゼン)Ru(pyO_2)]_3類よりも速以抽出速度,高い抽出能,高い抽出選択性を示すことが明らかになった。また,[(3,5-ジメチルアニール)Ru(pyO_2)]_3のジクロロメタン溶液を用いて海水からのLi^+の抽出を検討した。その結果,1回の抽出と,水による1回の有機相洗浄によって,海水中のLi^+のみを有機相へ効果的に分離できることが実証された。
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