研究概要 |
(1)アニソールをアレーン配位子,2,3-ピリジンジオール(py(OH)2)を架橋配位子とする環状有機金属化合物 [{Ru(anisole)(pyO2)}3] (1) と,1 に類似の立体構造を有する環状有機化合物 オキサカリックス[3]アレーンメチルエーテル (2) を合成した。これらの環状化合物を用いて水からジクロロメタンへのアルカリ金属ピクリン酸塩の抽出を行い,抽出平衡定数を決定し,抽出能力と選択性について相互に比較した。その結果,1 はリチウムイオンに,2 はセシウムイオンに対して最も高い抽出能力を持つことが示され,1 と 2 で抽出選択性が全く異なることが明らかになった。分子軌道法を用いた立体構造・電子構造に関する考察によって,これらの化合物の選択性の違いは,空孔の大きさと構造の柔軟性の違いに帰着された。 (2)三脚型配位子である1,1,1-トリス(サリチリデンアミノメチル)エタンのコバルト(III)錯体を合成し,この錯体を用いて水からジクロロメタンへのアミノ酸メチルエステルピクリン酸塩の抽出を行った。その結果,種々のアミノ酸メチルエステルのプロトン付加体が,錯体及びピクリン酸イオンとの三元体として抽出されることが示された。また,同錯体は,アルカリ金属イオンよりもアミノ酸メチルエステルのプロトン付加体に対して高い抽出能力を持つことが明らかになった。 (3)金属錯体をよく溶かすイオン液体を探索する過程で,塩酸溶液中の金イオン(テトラクロロ金(III)酸イオン)やガリウムイオン(テトラクロロガリウム(III)酸イオン)に対して高い抽出能力を持つイオン液体が見い出された。このイオン液体を用いて,金やガリウムの抽出分離を検討し,良好な結果を得た。
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