研究課題
イオン液体キレート抽出系における優勢抽出種を安定化させる因子の探求という観点から、以下に示す研究を実施した。1. 配位不飽和中性錯体を安定化させる因子に関する検討これまで中心金属の残余配位座には水分子が結合していると考えてきたが、2-テノイルトリフルオロアセトンによる3価ランタノイドイオンの抽出では水分子が結合していないという結果が得られた。ランタノイドの抽出では、中性配位子共存による協同効果が発現しており、親水性が必ずしも抽出に有利には作用していない。このことから、水分子に代わりイオン液体陰イオンが何らかの相互作用をしている可能性が示唆された。一方、キレート試薬にイミダゾリウム構造を組み込んだ1-メチル-3-[2-(8-キノリニルアミノスルホニル)エチル]イミダゾリウム塩を用いて2価遷移金属イオンの抽出を行った場合、組み込み前より抽出能が増大した。この場合の抽出種は見かけ上陽イオンとなることから、配位状態と電荷との間には必ずしも相関はなく、配位部位での構造的議論が重要であると示唆された。2. 配位飽和陰イオン性錯体を安定化させる因子に関する検討荷電錯体の抽出には、イオン液体構成イオンとのイオン交換が必須である。陰イオン性錯体が抽出されているのは現在のところフルオロ化部位を有する配位子の場合にほぼ限定されており、またイオン液体自身の疎水性が高いほど曲出能が高い。このことと疎水性イオン液体の化学構造とを勘案すると、フッ素原子由来の特異的静電的相互作用が安定化に大きく寄与すると示唆された。この部分について、この制約を破る系の探索も含めて今後さらに検討を行っていく。
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