研究概要 |
[薄層電解フローセルの作成]本年度は、水相と有機相を薄層にした液液界面電気化学電解セルのフローセルへの改良を試みた。導電性高分子薄膜で被覆したITO硝子電極,有機相含浸薄膜,試料溶液用薄層流路を形成した銀塩化銀電極を積層させたセルを作製した。既知濃度のイオンを含む試料溶液を用いて電極応答性を確認し、特に導電性高分子に着目して電解セルの調整を行った。その結果、電解効率が向上し、90%~100%の範囲内で40秒以内に電解が終了することを確認した。これに関しては、特許を出願した。一方、目的である電解フローセルを実現するためには、水相から有機相への電解効率とともに有機相から水相への電解効率も100%にする必要がある。しかし、実際に作成した電解セルでは、水相よりも有機相の面積が大きいため、一旦有機相に分配した目的イオンが側方拡散し、水相へ100%逆抽出されないことが分かった。これを改善するために水相と有機相の面積が等しい電解セルの作成に取り掛かっている。具体的には、有機シリコン系の高分子を成形することによって一体型の電解セルを作成する。 [フローセルに適した有機薄膜の検討]水相と有機相を薄層にしたフローセルを作製する場合、有機溶媒は、水との相互溶解度が低いこと、取扱いを容易にするため揮発性が低いことが条件となる。現在、試験的に用いているジクロロエタンの代替として、1種類のイオン液体およびイオンセンサーで用いられている9種の溶媒について検討を行った。その結果、安定な電極電位が得られ、且つ高い電流密度を示したものは、長鎖アルキル基またはフェニル基を有する2種のエーテル系溶媒であった。イオン液体および他の溶媒については、電極電位が不安定になるか、高粘度であるために小さな電流密度しか得られず、薄層フローセルの溶媒としては不適であった。今後、選択した溶媒をフローセルに適用する予定である。
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