本年度は,ポリエーテルが存在する系での水溶液内イオン会合反応として,陰イオンのジピクリルアミネートイオンとアルカリ金属-クラウンエーテル錯体との反応に関して検討を進めた. ジピクリルアミンはイオン対抽出系で高いイオン会合性を示す陰イオンとして知られていたが,キャピラリー電気泳動法に基づく本法により水溶液内でのイオン会合性を解析したところ,Li+,Na+,K+,Cs+,及び第四級アンモニウムイオンとのイオン会合性に劇的な変化はなく,K+の沈殿選択性,抽出選択性には水溶液内イオン会合性以外の因子が作用していることが推察された.対陽イオンとしてのアルカリ金属イオンを,18-クラウン-6によりクラウンエーテル錯体としてイオン会合試薬として用いたところ,Na+,K+,Cs+錯体でジピクリルアミネートイオンとのイオン会合性が高まり,ポリエーテルによる錯形成の効果が確認された.なお,クラウンエーテルの錯形成能は弱いので水溶液中には遊離のアルカリ金属イオンとクラウンエーテル錯体との2種類の陽イオン種が存在するが,本研究で二種類の陽イオンが混在する系での解析に初めて成功した. また,二次元構造を有するグラフェンの分離分析を目的として,ドデシルベンゼンスルホン酸を疎水性ミセル媒体として用いるミセル動電クロマトグラフィーにより,グラフェンと欠損を有する酸化グラフェンとの分離分析に成功した.通常用いられるSDSミセルではグラフェンの凝集を防げなかったことから,ドデシルベンゼンスルホン酸とグラフェンとの間の芳香環相互作用がミセル溶液中でのグラフェンの単分子分散に寄与していると考察した.
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