感染症ウイルスの超高感度検出を目標として、抗体固定化ビーズ表面での免疫反応に伴う質量変化を圧力-光変換素子で検出し、その検出信号を外部磁場の印加により増幅する方法を実現することを目的として、下記の検討を行い、本年度得られた成果は下記のとおりである。 (1)磁性ビーズへの外部磁場印加とそれによる圧力センサの圧力信号の評価 高分子圧電素子膜の表面に直径100μmの酸化鉄含有磁性ビーズを種々の量を置き、この直下に直径2mmφのネオジウム磁石をアクリル棒に固定し、これをソレノイド磁石により種々の周波数で上下し、圧電素子膜に及ぼす圧力を測定した。その結果、磁場印加前に比べて10倍から100倍の圧力が上昇することを明らかにした。また、周波数の増加に従って圧力増加の効果が増大することが分かった。一方、圧力信号は基板の振動と共鳴して時間とともに減衰することを見出した。 (2)磁性ビーズへのタンパク質の固定化と固定化量の評価 磁性ビーズにウイルス中のヘマグルティンタンパク質を認識する坑ヘマグルティン抗体を固定化するための予備検討として、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)をモデルタンパク質として固定化をペプチド結合により行った。その結果、固定化量は溶液中のHRP濃度にほぼ比例して増加することが分かった。500ppbのHRP濃度では、約6ngのHRPが固定されることが分かった。 (3)抗体固定化磁性ビーズを用いる免疫測定の評価 磁性ビーズに非イオン性界面活性剤抗体を固定化し、HRP標識非イオン性界面活性剤との免疫反応を行わせた後、ルミノール溶液と反応させて、化学発光量から磁性ビーズの反応性を評価した。その結果、HRP標識非イオン性界面活性剤の濃度に対して1ppbから1ppmの範囲において、シグモイド型の化学発光量を観測することができた。
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