研究課題/領域番号 |
22550076
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
今任 稔彦 九州大学, 大学院・工学研究院, 教授 (50117066)
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キーワード | 圧力センサ / 免疫測定 / 圧力-光変換素子 / インフルエンザ / 磁気ビーズ |
研究概要 |
感染症ウイルスの超高感度検出を目標として、抗体固定化ビーズ表面での免疫反応に伴う変化を圧力-光変換素子で検出し、その検出信号を外部磁場の印加により増幅する方法を実現することを目的として、下記の検討を行った。 (1)磁性ビーズの水晶振動子に対する応答と外部磁場印加による効果の検討 水晶振動子の一方の金電極表面に直径の異なる3,30,及び100μmの酸化鉄含有磁性ビーズを置き、この直下に、表面磁束密度の異なる(約150-300mT)のネオジウム磁石を固定したz方向可動ステージを設置した。磁石と磁性ビーズを置いた金電極の間隔を種々変化させて、水晶振動子の信号を測定した。その結果、磁束密度の大きな磁石ほど、また粒子径が大きなビーズほど水晶振動子の信号変化は大きく、特に、磁石と金電極の間隔が約1mm付近から急激な信号増加がみられることが分かった。 (2)磁性ビーズへの抗体の固定化と固定化量の評価 磁性ビーズにウイルス中のヘマグルティンタンパク質を認識する坑ヘマグルティン抗体を固定化するための予備検討として、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)標識抗非イオン性界面活性剤(APE)抗体をペプチド結合により固定化した。固定化量は、HRP酵素活性をオルトフェニレンジアミンの発色変化によって評価した。その結果、インキュベート溶液中の抗APE抗体の濃度に比例して固定化量が増加し、同濃度が100ppmでは抗体の固定化量は約10ng/mg-ビーズであった。 (3)抗体固定化磁性ビーズを用いる免疫測定の評価 磁性ビーズに抗APE抗体を固定化し、APEとHRP標識APEとの競合免疫反応を行わせた後、アンプレックスレッド溶液と反応させて、生成するレゾルフィンの蛍光強度から磁性ビーズの反応性を評価した。その結果、APEの濃度に対して1ppbから1ppmの範囲において、シグモイド型の蛍光強度を観測することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では圧力変化を光学的な変化に変換するための方法論の開発が大きな課題である。これまでのところ、磁性ビーズを用いる磁場による圧力変化の誘起ならびに磁性ビーズ上での免疫反応を光学的に変換する検討を行っており、それらは順調に進展している。今後は、下記の12項に示すように、それら2つを組み合わせて最終目標に到達できるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、圧電素子たとえば水晶振動子、圧電性高分子並びに無機圧電体を用いて、磁気ビーズに対する磁場の印加によって変化する圧力や力の効果による素子特性の基礎的検討するとともに、磁気ビーズを用いる免疫測定について検討してきた。特に後者については、界面活性剤APEやイムノグロブリンAを対象にして化学発光検出並びに蛍光検出法について検討してきた。今後は、磁場による磁性ビーズの及ぼす力を刺激として変化する有機薄膜や有機色素包埋リポソームなどの光応答を検討する。
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