1.チョップドファイバーを電極とした生体分子のセンシング 強化プラスチックから作られたチョップドカーボンファイバーを用い生体分子をボルタンメトリーにより検出する方法を開発した。一般にチョップドカーボンファイバーはサイジング剤で束ねられているため、電極として使用することは難しい。しかしながら、エタノールと塩酸でその表面を処理すると、導電性を有するようになることを見いだした。そのファイバーの機能を評価するためにヘキサシアノ鉄(III)酸カリウムの測定を行い、生体分子としてFAD、アスコルビン酸やNADHの酸化還元応答を記録した。エポキシ、ポリアミド、ポリウレタン樹脂をサイジング剤としたファイバーの中で、各々のピーク電流値はエポキシ樹脂被覆ファイバーで最も大きな値が得られた。その電極応答は市販のグラッシーカーボン電極と比較して電極応答および可逆性とも十分な性能を示した。 2.カーボン/コラーゲン膜被覆電極における感度の向上に関する研究 本研究では、生体分子間結合の足場として適した素材であるコラーゲン膜に生体親和性の高い導電性カーボン粉末をコーティングし、さらにコラーゲン溶液で被覆したサンドウィッチ型生体適合材料を作製した。ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウムの測定では、コラーゲン膜でグラッシーカーボン電極を被覆すると未被覆の電極応答の70%に減少した。カーボン粉末/コラーゲン膜被覆電極での応答は、それに比較して150%となりカーボン粉末を介して電子伝達がなされることが明らかとなった。 また、アスコルビン酸、NADの酸化応答も同様に増加する傾向が見られた。一方、カーボン粉末/コラーゲン膜での各ピーク電位は、未被覆電極で得られた電位に近づいており可逆性が改善された。このような生体適合材料はin vivoセンサ構築のモチーフとなり、電気化学的分野での生体高分子材料の適用範囲を広げるものとなる。
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