研究概要 |
本研究では規則配列構造体を微少液滴反応における固相反応場として用い,インクジェットにより送達した微少試料の迅速反応・分析を更に発展させ実用的な生化学分析の実現をめざす。単一分散ナノビーズを用いた規則配列構造体ドットの安定な形成方法の確立とこれを用いたセンシング技術の確立は分析化学的にも大変意義深い。インクジェットを用いて微少液滴反応場を形成し,迅速・高精度な生化学分析を行うために次の検討を行った。1)インクジェットの吐出特性の検討:これまでの知見を元に,インクジェットにより種々の液体試料,及び規則配列構造体作製のためのナノビーズ懸濁液を,定量的に,目的位置に正確に吐出するための基礎的検討を行った。また,インクジェットドライバを新規に作成しきわめてこう安定な吐出を実現した。2)インクジェットによる単一分散ビーズの吐出と規則配列構造体の作製に成功した。また,シリカナノビーズ懸濁液滴をPDMS基板表面に吐出し,規則配列構造体ドットを作製した。ナノビーズの分散性について詳細に検討し,安定な構造体の形成ができた。規則配列構造体を調製する際,溶媒の蒸発に伴う毛管力を制御するため,湿度制御し,ナノビーズの粒径,ビーズ懸濁液の濃度,溶媒,温度などの自己組織化・規則配列特性に影響を及ぼす種々の因子について検討・最適化した。必要な強度を確保するため,ビーズ相互を連結した構造体を作製したが,条件によっては連結が弱い場合があった。3)単分散ナノ粒子の合成:フォトニック結晶のストップバンドを制御し,配列性や表面修飾を容易にするため,100~400nmの単一分散コロイダルシリカナノビーズの粒径制御・合成に成功し,フォトニックストップバンドを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
規則配列三次元構造体の作製がきわめて難しく,イムノアッセイに用いるまでに多くの時間と労力を要してしまう。この点について何らかの簡略化が必要かと思われる。また,規則配列構造体の非特異的吸着を防止する手段を講じるとともに,構造体の総表面積と反応に関与する抗体・抗原などの反応性,拡散について理論的解析,迅速化・高感度化を両立できる構造体サイズの検討などを行い,最終年度までに目標を達成したい。
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