研究課題/領域番号 |
22550082
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
宮村 一夫 東京理科大学, 理学部, 教授 (40157673)
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キーワード | 走査トンネル顕微鏡 / 色素 / キラリティー / 表面吸着 / 金属錯体 / 動的挙動 / 表面配列 / 分子観察 |
研究概要 |
アキラルな分子が基板表面に吸着する際に、表と裏による二次元キラリティーを発現する。この選択性について色素を例にとって解明することを目的として研究を行っている。 色素分子は強く光を吸収する性質も重要であるが、繊維などを染める染色能を考えると表面に吸着するという性質も重要である。J会合体やH会合体などの色素分子同士の会合構造に関する研究は多いものの、表面でどのように吸着しているかを知ることは難しかった。しかし、原子を識別するほど高い空間分解能をもつ走査トンネル顕微鏡(STM)を用いると実空間で分子の表面吸着構造を観察することができる。昨年度までの研究では、色素及び色素の誘導体の合成を行い、インジゴ(和名:藍)およびインダントロンについてアルキル長鎖を導入した化合物の合成を行い、単離することに成功した。また、このアルキル長鎖を導入した色素のいくつかについて、黒鉛表面での吸着構造を走査トンネル顕微鏡で観察することに成功した。さらに濃度依存性が存在することも分かったが、まだ十分に高い空間分解能での観察ができていなかった。経時変化についても解析を行い、ドメインが変化する様を観察するのに成功したが、こちらも十分な空間分解能ではなかった。今年度の研究では、いずれの分子についても特徴的な二次元キラリティーを観察するのに成功した。研究成果は日本化学会の欧文誌の5月号に掲載予定である。 さらに経時変化についても、キラルドメインの形成過程の観察を試みた。色素分子と類似の構造を持つ金属錯体にも測定対象を広げ、理論計算も併用して二次元キラリティーがキラルドメインへと発展していく過程を解析した結果、十分な空間分解能ではないが、動的過程の観察に成功した。金属錯体の系についても、欧文誌に掲載可となり、印刷中の状況である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
色素にとどまらず、金属錯体についても成果を得ることに成功し、すでに論文にも投稿して採択となっているため。
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今後の研究の推進方策 |
現在の方法論で十分に目的を達成できる見込みが出来たため、当初の目的を遂行するとともに、空間分解能のさらなる向上を目指して、条件設定の厳密化など、技術の向上を図っていく。現状では、とくに問題点は出ておらず、今まで進めてきた研究方法で十分に成果が得られると判断している。また、測定対象も広げて、確立した手法の応用範囲を拡大していく。
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