本研究では、ガラス基板などのフォーマット上に金属(銀)と誘電体(プラズマ重合体)の各薄膜を順次製膜したナノ積層構造を構築することで蛍光強度を増強させ、その上で行う蛍光イムノアッセイを高感度に検出することを目的としている。 平成23年度までに蛍光増強を行うための最適条件下で抗原抗体反応に由来する蛍光シグナルを増幅できることを明らかにしたので、それらを踏まえ最終年度では、同様の構造を96穴マイクロプレート上にも構築し、同様の効果が得られるかを検討した。まず金属膜としてAgを、また誘電体膜としてヘキサジメチルジシロキサンをモノマーとするプラズマ重合膜をマイクロプレート上に望みの膜厚で製膜するために、さまざまな時間で製膜し、ウェル底面に形成された膜の厚さを触針型表面形状計測器で計測した。その結果、平板なガラス基板を用いたときの製膜速度と比べ、マイクロプレートを用いたときの製膜速度は極端に遅いことが明らかになった。このときのデータをもとに検量線を作成し、マイクロプレート上にナノ積層構造を構築した。これに、Cy3標識抗mouse IgG抗体を一定量分注し、蛍光強度を測定した。コントロールとして、未修飾のマイクロプレートを用いて同様の評価を行った。その結果、全く同じ蛍光物質が入っているのにも関わらず、ナノ積層構造を持ったプレートからの蛍光強度はコントロールプレートからの蛍光強度の20倍以上に増強されることが明らかになった。この結果、蛍光を増強できるナノ積層構造は、ガラス基板のみならず、より汎用性の高いマイクロプレートにも適用可能で、高感度なイムノアッセイが期待できることが示された。
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