研究概要 |
本年度は,呼気アセトンならびにイソプレンの自動化学分析装置を開発することを目的とした。 アセトンは,硫酸ヒドロキシルアミンと縮合し,アセトキシムを生成する。この際,硫酸ヒドロキシルアミン濃度はアセトン濃度に比例して減少する。残存する硫酸ヒドロキシルアミンは,鉄(III)-1,10-フェナントロリン(phen)錯体を還元し,赤色の鉄(II)-phen錯体(λmax = 510 nm)を生成する。この赤色錯体の510 nmにおける吸光度は,アセトン濃度に対応して定量的に減少するので,アセトンを定量することができる。この反応系をフローインジェクション分析(FIA)法に導入し,液相アセトンの定量法を確立した。これを気相アセトンの定量に応用するため,重力滴下蒸発法によるアセトン標準ガスの発生法を開発した。これにより発生させたアセトンガスは,拡散スクラバー(DS)に導入され,アセトン吸収液を前述のFIAシステムに導入することにより,数十ppbv~数ppmvレベルのアセトンガスの定量が可能であった。本法を実際の呼気分析に応用し,絶食により脂肪酸の代謝に伴う呼気アセトンの上昇を確認することができた。 一方,イソプレンはオゾンと反応し,ホルムアルデヒドを生成する。ホルムアルデヒドは,ジメドンと反応し蛍光誘導体(λex = 395 nm,λem = 463 nm)を生成する。この誘導体の蛍光強度がイソプレン濃度に比例する。この原理をFIAシステムに導入し,液相イソプレンの定量法を開発した。イソプレン標準ガスをインピンジャー中のオゾン水に通気することにより,イソプレンをホルムアルデヒドに変換し吸収液とした。これを前述のFIAシステムに導入し,イソプレンガスの定量を行うことができた。感度は数十ppmvレベルであるので,呼気イソプレン分析には,更なる高感度化が今後の課題である。
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