研究課題/領域番号 |
22550086
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
宮武 智弘 龍谷大学, 理工学部, 准教授 (10330028)
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キーワード | 分子センシング / 分析科学 / 酵素 / 脂質 |
研究概要 |
特定成分の検出・定量や酵素阻害剤の評価・探索に利用できる酵素センサーの開発を目的とする。酵素センサーでは、酵素反応の前後で生成した(または消費された)物質の量を効果的に検出し、信号に変えるデバイス(トランスデューサー)の開発が鍵となる。本研究では、膜透過性のポリマーと蛍光色素を内封したリポソームを用い、様々な酵素反応系に利用できるとともに、簡便かつ蛍光発光により目視でも評価可能な酵素センサーの構築を目指す。 今年度の研究では、蛍光性リポソームと膜透過性のポリマーとして、ポリアリルアミンを用いて、プロテインキナーゼならびにその阻害剤の活性を評価できるシステムの構築を目指した。酵素反応溶液を含む緩衝溶液中でポリアリルアミンの膜透過を調べることにより、酵素反応に伴うATP→ADPの物質変換を蛍光として検出した。すると、プロテインキナーゼ反応の進行に伴って蛍光強度の増大が観測され、同酵素の反応を蛍光でセンシングすることに成功した。続いて、プロテインキナーゼの阻害剤の活性を評価できるシステムの開発を行った。同酵素の阻害剤として広く知られている化合物としてH-89を用い、これを酵素反応溶液中に添加して反応を追跡した。すると、H-89の添加量を増やすにつれて、蛍光強度の減少が確認され、酵素反応が阻害されている様子を確認することができた。さらに、H-89のIC50値を算出することにも成功し、本システムは酵素阻害剤のスクリーニングのみならず、酵素阻害剤の定量的評価にも利用できることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において重要な目標であったプロテインキナーゼの阻害剤の活性評価の課題に対して、簡便かつ迅速に評価できた。また、定性的な評価だけでなく、阻害剤の活性を定量的に評価することにも成功し、当初の目的を達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究でターゲットとしているプロテインキナーゼは、細胞増殖などにも関係し、その阻害剤は癌治療にも役立てられると考えられる。そのため、プロテインキナーゼの阻害活性の評価は大変重要であり、より簡便かつ迅速に評価できるスクリーニングシステムの開発が求められている。今後は、種々のプロテインキナーゼ阻害剤の活性を評価することによって、本システムの汎用性を高める研究を行う。また、検出感度の向上を目指し、より低濃度で機能する膜透過性ポリマーの開発を併せて実施する。
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