本年度はこれまでに購入したMOXTEX社製X線管Miniature PSとX線源のコントローラー(FTC-200)および既存の高感度X線検出器(SDD)を用いたin-situX線吸収スペクトル測定装置の設計開発を行った。X線源、コントローラーおよび検出器の基本配置を決定し、実際に作成を行う業者と数回の打ち合わせを行い、測定装置の配置図を決定し装置の作成を行った。今回作成した装置はインターロックを有しており鉛ガラス製のケースが閉じられていない場合、X線が発生されないようになっている。今年度作成した装置にX線源や検出器を取り付け動作確認を行った。その後、各種スペクトルの測定を行い、装置の性能評価を行った 次に、これまでに得られた配位子を用いて各種銅(II)錯体の合成を行った。得られた銅(II)錯体を触媒として用いてリン酸ジエステルの加水分解反応を行った。触媒反応により生じたp-ニトロフェノレートの吸光度測定は紫外可視分光光度計を用いて行った。得られた結果から反応速度定数の決定を行った。その結果、環サイズの増加およびメチル基を導入により銅(II)錯体の触媒能が向上することが示された。 さらに、合成した銅(II)錯体のXAFSスペクトル測定を佐賀県立九州シンクロトロン光研究センターのBL-11で行った。固体状態と溶液状態で測定したXANESスペクトルの形状に差が観測された。また、得られたEXAFSスペクトルの解析の結果、固体では銅(II)イオンは一個の配位子と二個の塩化物イオンが配位していることが示された。一方、溶液状態では銅(II)イオンは一個の配位子と二個の水分子が配位していることが示された。今後我々の作製した装置で得られたスペクトルと放射光施設で得られたスペクトルの比較を行い、装置の有用性の検討を行っていく。
|