研究概要 |
有機ボロン酸は水、空気に安定で取り扱いやすく合成試薬として優れているが、そのホウ素-炭素結合は化学的には不活性であることから遷移金属触媒による活性化が不可欠となる。しかしながら安定で取り扱いやすい有機ボロン酸の中には炭素-ホウ素結合が切れ易く触媒的な合成反応に利用できない化合物もあり問題となっている。 本研究課題は、合成化学的利用が困難とされた2-ピリジンホウ素化合物類の利用を重要課題として、C-B結合の遷移金属触媒へのトランスメタル化を経由する有機合成反応の開発を計画した。新奇な有機ホウ素化合物として有機トリオールボレート塩の創製、遷移金属触媒反応への利用を中心に研究した。 1.有機トリオールボレート塩の合成法の開発 以下の合成法を確立しヘテロ芳香族トリオールボレート塩を合成した。 (1)有機ボロン酸を経る合成法:有機ボロン酸、トリオール、塩基よりトリオールボレート塩の合成に成功した。 (2)有機リチウム、マグネシウム試薬を使用する合成法:C-HおよびC-XよりLiあるいはMg試薬を調整後金属交換により無水条件にてトリオールポレート塩の合成法を確立した。 (3)触媒的芳香族ホウ素化を経る合成法:パラジウムもしくはイリジウム触媒直接ホウ素化法を利用しトリオールオールポレート塩を合成した。 2.有機トリールポレート塩の炭素-炭素結合形成反応の開発 炭素-炭素、炭素-窒素結合形成クロスカップリング反応、不斉付加反応に利用した。2-ピリジントリオールポレート塩のクロスカップリング反応、オルト四置換ビアリール合成、2-フリルトリオールボレートの不斉1,4-付加反応の開発に成功した。 繰り越した補助金での成果:第58回有機金属化学討論会にて成果発表した。 トリオールボレート塩の対イオンに関する知見を得た。
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