新しい共役構造の開発は有機半導体デバイスの発展のために必須の課題である.本研究では,多環式芳香族化合物を適切に環状連結することにより,3次元的に共役が広がった非平面共役分子群を開発することに成功した. 本研究では,多環式芳香族化合物を(1)炭素ー炭素単結合,あるいは(2)ケイ素ーケイ素結合を介して環状に連結するという合成手法により,新しい共役構造を構築した.この手法は,これまでに用いられてきた,縮環構造を拡張する手法と比較し,簡便であるのみならず,多様な芳香族化合物を連結することができるため,汎用性が高く,様々な構造・物性を有する共役構造が得られる.本研究では,芳香族化合物と(1),(2)の連結法を適切に組み合わせることにより,ゆがんだシート状,チューブ状,階段状の共役構造を構築した. 本手法を用いることにより,有機ELデバイスに用いることができる有機半導体材料を報告した.また,該当年度では,新しく開発した共役構造の分子特性や,分子集合体特性を明らかにすることができた.下記具体的に示す. 階段状共役構造の溶液中の動的解析を行うことにより,この構造が有する構造的柔軟性を明らかにした.また,ゆがんだシート状共役構造がカラム状の集積構造を形成することを明らかにした.これらの成果は,論文や学会で発表している.
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