研究概要 |
分子内Horner-Wadsworth-Emmons (HWE)反応による大環状ラクトンのEZ選択的合成法の開発を行なった。反応条件の最適化を行なうためにアルデヒドを分子内に持つHWE試薬(RO)_2P(O)CH_2CO_2CH_2・・CHOを合成した。低温で塩基と反応させると分子間反応が優先しジラクトンやトリラクトンが得られた。そこで高度希釈条件下3当量の塩基と溶媒を入れたフラスコに0度または室温で1-10時間かけて試薬溶液を滴下したところ、12-18員環ラクトンが高い収率で得られることが分かった。RとしてPhまたはo-tBuC_6H_4の試薬を用いTHF中塩基としてNaI-DBUを用いると94-99%のZ選択性、60-99%の収率でZラクトンが得られた。R=Etの試薬ではMeCN中LiCl-DBUを塩基として用いると89-100%の選択性でEラクトンが得られた。ホスホネート部分の構造と適する反応条件を選ぶことにより任意の立体を持つα,β-不飽和ラクトンが得られることが分かった。天然にはZ-α,β-不飽和大環状ラクトン構造を持つ生理活性物質が多数存在しており、これまで多くの合成研究が行なわれているが、Z-α,β-不飽和ラクトン構造の立体選択的な構築は困難であった。本研究で開発した反応は一般性があり、これら生理活性マクロラクトン合成に利用可能であると考えられる。そこで、分子内HWE反応を鍵反応とする13,15-didehydroxymacrolactin Aの合成を計画した。化合物を3つに分けてそれぞれを合成し、後で結合させるコンバージェント法を用いることとし、それぞれの合成に着手した。これまでに3つのうち2つの部分構造の構築に成功しており、今後残る一つを合成した後、3つの部分構造を結合させ、最後に分子内HWE反応により、大環状化合物の立体選択的な合成を行なう予定である。
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