研究概要 |
非平面性のパイ共役部位を有する分子は一般にその合成が困難である。それ故、非平面性のベンゼン環や曲がったアルキンなどを含む分子の合成やそれら分子の持つ物性に古くから興味がもたれていた。本研究代表者は、還元的芳香環形成反応を利用することで非平面性ベンゼン環の構築に成功している。平成23年度において研究代表者は、段階的クロスカップリングを用いることで環状分子の高効率合成に成功した。従来のカップリング反応を用いる環状分子の合成では、目的とする環状の三量体以外に環状の二量体、四量体、多量体が副生し、精製も困難であった。これに対し、環状の三量体を二つの構成要素に分け、これを別々に合成し、最後にカップリングさせることで高効率に目的物を合成できることを見出した。本手法を用いることで異なる官能基を有する環状分子の創製も可能となる(平成24年度の研究推進に利用する)。 酸性条件下、3,6-ジメトキシシクロヘキサ-1,4-ジエン類に塩化スズ(II)を作用させることで、メトキシ基の脱離を伴う還元反応が進行し、歪みを持つベンゼン環へと効率良く変換される。この還元的芳香環形成反応を利用することで、これらの分子からフラーレン包接能を有する環状パラフェニレンアセチレン類へと効率良く変換できることも見出した。得られる大環状分子はフラーレンや高次フラーレンの包接能を有し、また環内に含まれる二種類の芳香環の回転挙動を温度により制御できることも見出した。これら平成22、23年度に見出した成果をまとめ、現在論文投稿中である。
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