非平面性のパイ共役部位を有する分子は一般にその合成が困難である。それゆえ、非平面性のベンゼン環や曲がったアルキンなどを含む分子の合成やそれら分子の持つ物性に古くから興味がもたれていた。本研究では非平面性パイ共役大環状分子を合成し、その物性だけでなくフラーレン類の包接挙動を明らかにすることを目的としている。平成23年度までに非平面性大環状分子の構成ユニットの合成とそれらを用いる非平面性大環状分子の構築、フラーレンとの包接挙動について明らかにしている。平成24年度において、構成ユニット内にもう一分子の非平面性大環状分子を結合できる四置換ベンゼンの導入に成功した。これを利用することで、二分子の非平面性大環状分子が一つのベンゼン環を介して連結された双環状分子を合成した。また、この双環状分子がフラーレンを二分子包接することも見出した。なお、安定なフラーレン包接体を形成させるためには、パイ共役環状分子内に電子供与性基を導入する必要があることもわかった。電子供与性基を導入することにより、包接体内のフラーレン分子の第一還元電位が負にシフトすることも見出しており、上述の結果を支持するデータであるといえる。 次に段階的合成法を利用することで、非対称な非平面性大環状分子の構築および異なる官能基を有する大環状分子の構築に成功した。これら成果は新しい機能性環状分子構築に欠かせない手法となると考えられる。なお、本研究において得られた成果に関して、平成24年度の成果は、現在論文誌に速報として投稿中である。またそれ以外の成果は、まとめ近日中に別途論文誌に投稿する予定である。
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