研究課題
当初の目的どおり末端アルキンとイミンとの反応を検討していたところ、研究予定とは異なる反応を見出したので、本年度はその検討を行った。具体的にはレニウム錯体を触媒に用いた、末端アルキンとホルムアルデヒド由来のイミンとの反応によるアリルアミン誘導体の合成である。この反応はレジオ選択的に進行し、アルキンの内部炭素とイミン炭素とが新たな炭素-炭素結合を生成した。アルキン末端炭素へはイミン窒素上の置換基の、α-炭素上の水素が移動した。よって本反応ではイミン窒素上の置換基のα-炭素が水素を有していることが必須である。しかもその置換基の選択が重要であり、例えばブチル基では全く反応が進行せず、ベンジル基では中程度の収率で生成物を得た。さらなる検討の結果、ジフェニルメチル基を置換基として用いた時に最も収率よく生成物を得ることができた。この生成物は容易に加水分解することができ、窒素上に置換基を持たないアリルアミン誘導体を得ることもできた。エステル基やイミド基、シロキシ基、シアノ基などの官能基を有する末端アルキンを用いても反応は進行した。さらに反応機構の情報を得るために次の実験を行った。まずイミン炭素を^<13>Cで標識化したものを用いて反応を行ったところ、アリル基のsp^3炭素が^<13>C化された生成物のみが得られた。続いてイミン窒素上のジフェニルメチル基のα-水素を重水素に置換したものを用いて反応を行ったところ、二重結合に対してイミン炭素と同じ側が重水素化された生成物のみが得られた。これらの結果から、本反応の反応機構にビニリデンレニウム錯体が鍵中間体として含まれていると考えている。
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