本研究では、ジビニルモノマーのラジカル重合により立体規則性制御されたポリマー(ヘテロタクチックボリマー)の合成の設計指針を確立することを目的とし、以下点を明らかとした。 アクリル酸、メタクリル酸、2ヒドロキシエチルメタクリレートを、オルト二官能性ベンゼンとエステル結合させ、鋳型とビニル基が様々な距離を有するジビニルモノマーを合成した。得られたモノマーのラジカル重合において、重合溶媒・モノマー濃度・重合温度を因子とし、可溶性直鎖高分子を合成する条件を検討した。さらに、得られた高分子を加水分解し、直鎖状高分子とし、生成物の立体規則性をNMRより検討した。この結果、極性溶媒中において、ゲル化が阻止されやすいこと、また、50℃以上では急速にアタクチックとなり、立体規則性制御能が失われることが明らかとなった。さらに、ε立体規則性はシンジオタクチックであることが明らかとなった。 また、疑似ジビニルモノマーとして、アクリル酸またはメタクリル酸とカテコールを溶液中で混合し、疑似ジビニルモノマーの形成を温度および溶媒の極性度を因子とし、検討した。十分な水素結合を確認した系について重合をおこなった結果、極性溶媒中で高いシンジオタクチック性が発現した。NMR解析の結果、これは、カテコールのベンゼン環同士のπ-πスタッキングによるものであることが示唆され、低分子においても、重合時に芳香族環の高次は空間配置の可能性が示唆された。このことは、芳香族系モノマーでのヘテロククチックポリマー重合において、重要な知見となる。また、ルイス酸等の金属原子を含まない系においても、有機低分子の添加によりクリーンな系でラジカル重合により、立体規則性制御が可能となることを示した。
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