研究課題/領域番号 |
22550107
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
斎藤 礼子 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 准教授 (30225742)
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キーワード | 高分子合成 / 立体規則性 / ラジカル重合 / ヘテロタクチック |
研究概要 |
本研究では、ビニル系モノマー2分子を鋳型に対し結合し、その空間位置を精密に制御し、ラジカル重合によりヘテロタクチックポリマーを簡便・高効率に合成する方法の開発を目的としている。H23年度は以下の3点について研究した。 1:「共有結合型ジビニルモノマーの重合と解析」 カテコールジメタクリレートの重合の速度論的解析より、ヘテロタクチックポリマー(mr〓95%)の合成にはビニル基の空間配置と運動性の制御が有効であることを見出した。ヘテロタクチックポリメタクリル酸メチルがTg約115℃、Huggins定数0.37であることを見出し、ヘテロタクチックポリマーが新規材料となることを明らかとした。 2:包接錯体型(疑似)ジビニルモノマーの合成 2-ビニルピリジン・4-ビニルピリジンをククルビット[n]ウリル(n=6~8)、および、ランダムメチル化シクロデキストリン類に種々の雰囲気下で包接体形成させ、その解析を行った。これよりヘテロタクチックポリマー合成に適した包接錯体を選定し、重合した。その結果、高ヘテロタクチック性(mr>80%)ポリ(4-ビニルピリジン)の合成に成功した。この方法は、ホストも簡便に除去されたことから、基礎科学的にも工業的にも有用である。 3:イオン結合・水素結合型(疑似)ジビニルモノマーの重合 カテコール、レゾルシノール等とアクリル酸・メタクリル酸の水素結合の条件を明らかとした。さらに、重合条件検討の結果、水素結合を保持したままの重合を可能とした。比誘電率が約40の溶媒中、35℃の温和な条件での重合において、高シンジオタクチック(r diad=90%)ポリメタクリル酸の合成に成功した。ヘテロタクチックポリマーは得られなかったが、本方法は、従来の多段階からなるシンジオタクチックポリマーの合成と比較し、ポリメタクリル酸から直接合成が可能である点、用いる試薬の毒性が低く、安全性も高い点から、飛躍的にグリーンな合成方法であり、基礎科学的にも工業的にも重要な知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1:ポリメタクリル酸エステルに加え、新たにポリ(4-ビニルピリジン)でも高ヘテロタクチックポリマーの合成に成功した。合成方法のアプローチが異なる方法でも合成が可能となることを明らかとした。 2:ヘテロタクチックポリメタクリル酸メチルの物性解析より、ヘテロタクチックポリマーが新たな素材となりうることを明らかとした。
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今後の研究の推進方策 |
1:包接錯体型モノマーの重合解析 H23年度に合成に成功したヘテロタクチックポリビニルピリジンの知見をもとに、溶媒のイオン強度、極性を因子として、ヘテロタクチックポリマーの合成メカニズムの解明を行う。他のスチレン系モノマーへの汎用性についても検討する。 2:イオン結合・水素結合型疑似ジビニルモノマーの重合 水素結合の対象として新たにジアルコール類を用い、また、イオン結合性モノマーとして適性な分子構造を有するモノマーを作成し、重合し、立体規則性制御メカニズムと分子構造を関係を解明する。 以上得られた知見をもとに、汎用化のメカニズムを確立する。
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