研究課題/領域番号 |
22550112
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山口 浩靖 大阪大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (00314352)
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研究分担者 |
原田 明 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80127282)
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キーワード | モノクローナル抗体 / 立体異性体 / キラル / 分子認識 / ビナフチル誘導体 / 光学分離 / 抗原-抗体反応 / 特異性 |
研究概要 |
本研究では分子認識を利用した新規機能性材料の開発を行う。特に優れた分子認識能を有する生体高分子「抗体」を用いて、光学活性(キラル)化合物を特異的に結合させた不斉反応場を構築する。キラル配位子を有する金属錯体と抗体との複合体を作製し、テーラーメイドの不斉触媒を得る。抗体とキラル有機金属触媒との複合体において基質選択性・立体選択性を発現させ、さらにこれらを熱応答磁気粒子に固定することで、キラル分子の分離精製法の革新と環境調和型材料の創出を目指す。この研究で注目したキラル分子は不斉触媒(遷移金属錯体)の代表的な配位子の部分構造に用いられているビナフチル誘導体である。これまでにビナフチル誘導体の一方の光学異性体(S体)に強く結合するモノクローナル抗体を作製することに成功した。抗体の基質結合能、立体選択性を調べた結果、R体よりもS体に約320倍高い親和性を有していることが酵素標識抗体測定法(ELISA)により明らかになった。本年度は本モノクローナル抗体を量産するとともに、熱応答性高分子を利用した新規キラル分子識別システムを開発することができた。ポリN-イソプロピルアクリルアミドの中央部にリンカーを介してビナフチル誘導体(S体)を結合させた熱応答性ポリマーを合成した。このポリマーと抗体SIE11を混合すると、その下限臨界溶液温度(LCST)が上昇することがわかった。この複合体にビナフチル誘導体(S体)を添加するとLCSTが減少した。一方、R体を添加してもこのような変化は見られなかった。抗体の特異的な分子認識によりポリマーの集積挙動が変化することを利用して、目視でもキラル分子が検出できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において重要な分子認識素子となるキー化合物「キラルを認識するモノクローナル抗体」を生産する細胞の単離およびその細胞を用いた抗体量産体制を整えることができた。さらに本研究目的である熱応答性材料と抗体とを組み合わせて、新規キラル識別システムを開発することができた。これらの材料の基礎的知見が得られ、キラル識別に充分な特性を有することが分かった。さらに高度にシステム化することにより新しい触媒システムへの展開が見込まれるため
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今後の研究の推進方策 |
磁気粒子表面に熱応答性高分子とともに抗体の定常領域(Fcフラグメント)に結合するプロテインAあるいはプロテインGを固定し、モノクローナル抗体を磁気粒子の表面に導入する。表面のモノクローナル抗体にキラル金属配位子を導入した触媒を固定する。この粒子を用いた不斉触媒機能を探求する。モノクローナル抗体が結合することによる触媒挙動の変化、立体特異性・基質選択性を調べる。
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