研究課題/領域番号 |
22550113
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
井原 栄治 愛媛大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (90243592)
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キーワード | ジアゾ酢酸エステル / 重合開始剤 / パラジウム錯体 / 高分子合成 |
研究概要 |
1.ジアゾカルボニル化合物の重合制御を可能とする新規重合開始剤系の開発 ジアゾ酢酸エステル類の重合に有効な新規開始剤系として、申請者らが本研究計画において前年度までに見出した塩化π-アリルPd/ボラート系の、各種のジアゾ酢酸エステルに対する重合開始能についての詳細な検討を行った。その結果、この開始剤系では連鎖移動が起こり易いために見かけの開始剤効率が高いが、高分子量ポリマーを得ることが難しいことが分かった。さらに、MALDI-TOF-MSを用いて、この開始剤系により得られるポリマーの末端構造の解析に成功し、かなり複雑な開始および停止機構の詳細を明らかにした。また、開始剤系に各種のアルコールを加えると、アルコールが連鎖移動剤として作用し、ポリマーの開始末端にアルコール由来のアルコキシ基が導入された。そして、塩化π-アリルPd/ボラート系におけるボラートは必ずしも必要ではなく、塩化π-アリルPdのみでもジアゾ酢酸エステルに対する重合開始剤として機能することも判明した。 以上のような重合機構に関する知見は、分子量制御の可能なリビング重合を実現できるPd錯体開始剤系の開発において、大いに役立つものであり、その意義は極めて大きい。 2.エステル部位に様々な置換基を有するジアゾ酢酸エステルの重合挙動の解明と、この重合による新しい高分子の合成 新たな試みとして、エステル部にピレン環を有するモノマーの重合について検討を行った。サイズの大きいピレン環を有しているにも拘わらず、塩化π-アリルPd/ボラート系によるこのモノマーの重合により、分子量7000程度のポリマーが得られた。このポリマーの主鎖の周囲にはピレン環が密集しているが、その特徴的な構造を反映して、このポリマーのピレン環を励起した際に、その励起エネルギーがエキシマー発光として放出される効率が、極めて高いということが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画の最も重要な目標であるジアゾ酢酸エステルの重合制御の達成には至っていないものの、その目標達成のために極めて重要な知見を得ることには成功している。また、この新しい重合法を用いた機能性高分子として応用の期待できる新しいポリマーの合成に成功している。
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今後の研究の推進方策 |
ジアゾ酢酸エステルの重合制御に関しては、塩化π-アリルPdを基本とし、これに適当な配位子や添加剤等を加えることによる重合開始能の改善による目標の達成を目指す。また、機能性高分子合成の試みについては、ピレン以外の芳香環や各種の極性官能基をエステル部に有するジアゾ酢酸エステルの合成とその重合による検討を継続する。
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