シアン化物イオンは極あて高い毒性を持つにもかかわらず、様々な工業分野で利用されている。そのため高感度で汎用性のあるシアン化物イオン検出試薬の開発が求められている。既に、幾つかのシアン化物イオン検出試薬が開発されているものの、高い選択性と水溶性を兼ね備えた例はない。 本研究では、シアン化物イオンの高い求核性と、他のアニオン類に比べ低い水和熱から水中あるいは水混合溶媒系でのシアン化物イオン検出試薬開発を目的とした。その際に活性化されたカルボニル基とオキシエチレン鎖を持つジアシルカルボヒドラジド誘導体およびトリウレット誘導体を合成し、その水溶性シアン化物イオン認識レセプターとしての機能評価を行うことを目的としている。 昨年度までに、ジアシルカルボヒドラジド誘導体の合成法として、アシル化合物とカルボヒドラジドとを二層(水層、油層)系中で、塩基としては水酸化ナトリウムを用い、相間移動触媒として臭化テトラブチルアンモニウムを、反応温度として40℃などの合成法の確立と合成条件の最適化をおこなった。 今年度は、合成したレセプターのシアン化物イオン認識機能性評価を行う。具体的にはUV-visおよび蛍光スペクトル測定により認識機能の評価を行う、その際、水および水含有有機溶媒を用い認識機能の溶媒効果を明らかにする。また、得られた結果を踏まえ、分子の構造最適化を行い、最適分子の合成法の開発およびその機能性を明らかにしていく。
|