本研究の主たる目的は、刺激や環境を感受できるペプチドらせん型分子機械(分子マシーン)を考案すること、さらにその機能性材料設計のための基礎的知見を集積することである。本年度も昨年度と同様にらせんペプチドやオリゴペプチドへの刺激応答性を調べ、設計した分子マシーンの特性評価を行った。特に、昨年度から継続の次のテーマを中心にした。即ち、(1) 溶媒環境に応答するらせん分子マシーン、(2) キラル添加剤により応答するらせん分子マシーン、(3) らせん性ペプチドにより設計した分子材料である。 (1)と(2)についは、異常アミノ酸を含有する様々なシーケンスのらせんについて、外部刺激(溶媒、キラル添加剤など)によるらせん分子の巻きの駆動、それに伴う円二色性や蛍光信号による検出を調べた。また計算により、らせん分子や外部分子との会合体の安定構造の評価さらにはスペクトル予測を行い、実験結果を理論的に解釈した。その結果、これら異常アミノ酸含有らせん分子マシーンは外部刺激に対して効率よく駆動し、自身の分子信号として検出できることが分った。(3)に関しては、らせん分子マシーンの材料化への展開を期待し、昨年度から継続中のらせん分子を導入した汎用高分子や特殊形態高分子に加え、ミセル系や会合系についても取り組んだ。 以上より、ペプチドらせん型分子マシーンとその機能化に繋がる基礎的知見を得ることができた。これらの研究成果を含む学会発表は、平成24年度において11件を行うことが出来た[第61回高分子学会年次大会(横浜)にて5件、第61回高分子討論会(名古屋)にて6件(内1件は招待講演)]。研究成果の幾つかについては、論文原稿を作成中である。本期限内に公表できなかった成果も含め、将来的に発表していく予定である。
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