研究課題/領域番号 |
22550123
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
秋山 毅 滋賀県立大学, 工学部, 准教授 (20304751)
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キーワード | 膜・集合体 / フラーレン / 分子構造 / 電気化学 |
研究概要 |
本研究では、フラーレン-ジアミン付加体微粒子の反応機構の解明と粒径・形状・組成制御、付加体微粒子およびその集積体の構造と特性の相関の明確化、これらの新材料のデバイス応用を目的としている。 これらのうち、平成23年度は、これまでに得られた知見を基に、より多様な構造・組成を持つフラーレン-ジアミン付加体微粒子を得るための反応条件の探索を行った。また並行してフラーレン-ジアミン付加体微粒子を薄膜化する手法の探索・検討と、その光電変換デバイスへの適用を行った。 フラーレン類と種々のジアミン分子またはアミノ基を備えたポルフィリン色素との、付加体または複合体微粒子を得た。これらの形状、微細構造、光化学特性などの評価を行った。特に、フラーレンーアミノポルフィリン複合体微粒子については、非共有結合性の相互作用によってゆるやかな複合化が進行した結果生じたと考えられる結果を得た。また、フラーレンーエチレンジアミン付加体微粒子の微細構造評価の結果、この微粒子を構成する分子の密度が部位によって異なることが強く示唆される結果が得られた。この知見は、今後のデバイス応用に際して極めて重要な知見である。 一方、フラーレンージアミン付加体微粒子の薄膜化については、電場吸着による集積化、付加体微粒子と導電性高分子材料との複合化、付加体微粒子の可溶化などの検討を進めた。特に、付加体微粒子の可溶化プロセスを経れば、フラーレンージアミン付加体微粒子由来の薄膜がスピンコート法によって簡便に得られることが明らかとなった。この手法を応用して有機薄膜太陽電池を試作したところ、光電変換機能を備えていることが明らかとなった。このことは、今後の有機電子デバイス関連への応用についての礎となる知見といえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の第一の目的である、フラーレンージアミン付加体微粒子の反応機構の解明と、その粒径・形状・組成制御の実現については、ほぼ予定通り研究が進捗している。第二の目的である付加体微粒子およびその集積体の構造と特性の相関や、各種光電変換素子などへの応用についても、予定通り研究が進捗している。特に、フラーレンージアミン付加体微粒子の有機薄膜太陽電池への適用が可能であることについては、研究計画当初の想定よりも年度単位で早めに得られた成果であり、今後の研究推進を加速する知見であると期待している。
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今後の研究の推進方策 |
既に得られた知見を基に、より精密な測定、評価などを通して、フラーレンージアミン付加体微粒子などの生成反応機構の解明を目指す。本研究で得られるフラーレンージアミン付加体微粒子などの機能や構造の解析については、超分子化学や構造有機化学の観点からのアプローチが重要であり、連携研究者との緊密な共同研究によってこれを実現したい。 一方、各種デバイスへの応用については、フラーレンージアミン付加体微粒子および関連の材料について、特に有機半導体材料としての特性に注目して研究を推進する予定である。
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