研究課題
我々は有機分子電子スピンをもちいて量子演算・量子情報処理を行う研究を行ってきた。量子ビットとして様々な量子物理系が提案され研究されているが、最近ではそれぞれの量子物理系の長所をいかしたハイブリッド系を構築することが注目されている。特に最近ではハイブリッド系における量子メモリーの研究課題がクローズアップされてきた。量子情報処理において量子メモリーは必要不可欠であるのでその重要性に鑑み昨年度より有機磁性分子をもちいた量子メモリー開発に研究をシフトさせた。2つのニトロキシド基をもつ分子であるイミノニトロキシド‐ニトロキシド直接連結型基底三重項ジラジカル1(微細構造定数D=-0.0655 cm-1)は、ゼロ磁場下で超伝導量子ビットと結合する分子スピン量子ビットアンサンブルとして興味がもたれ量子メモリーとして期待される。当該年度は、量子メモリーとして利用するためジラジカル1をホスト結晶に希釈させた希釈単結晶を育成しESRによるキャラクタリゼーションを行った。ジラジカル1のNO基をCO基に置換した構造のよく似たホスト分子を用いることによりジラジカル1を任意の濃度で希釈させることができることがわかった。希釈単結晶をすりつぶしたパウダーのESR測定の結果、ジラジカル1は結晶場においてD値の異なる2つのコンフォマーが存在することがわかった。ESRスペクトルの温度変化の測定の結果、温度の低下につれてD値は変化し、それはNO基を含む2つの面の2面角が変化するためであることがわかった。今回の研究結果からジラジカル1の希釈単結晶は、超伝導量子ビットとのハイブリッド系における量子メモリーとして有望であることがわかった。今後の量子情報処理の研究の主流になると考えられるハイブリッド系の開発に大きく貢献できると考えられる。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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