研究概要 |
フォトクロミック結晶であるスピロピランとジアリールエテンに対する応力と光の効果を調べた。 1. アルキル鎖の異なるニトロスピロピラン(SP) lndoline環の窒素のアルキル鎖の異なるheptylSp, decylSP, octadecylSPの応力効果を、これまでのmethylSP, propylSP, pentylSPと比較した。heptylSP, decylSP, octadecylSPは、応力下で緑色、応力を抜くと青色に変化するが、methylSPに比べると緑・青色が薄い。これらのラマンスペクトルは、methylSPに類似の形状であるが、応力下では蛍光が強く測定できない。応力を抜くとほぼ元のSPの形状に戻り、methylSPに見られたメロシアニン(MC,開環体)の弱いバンドはなく、応力によるSPからのMCの生成量が少ないことを示唆している。静水圧実験では、methylSP2.6GPa、propylSP2.OGPa、pentylSP1.5GPaで緑色に変化し、鎖長に応じて低下する傾向が見られた。さらにSPの鎖が長くなると、低い圧力で薄く着色し、徐々に明瞭な緑色に変化する。その範囲は、heptylSP1.3~2.8GPa、decylSP1.9~3.4GPa、octadecylSP0.7~2.9GPaであった。また、methylSP, propylSP, pentylSPの薄膜の紫外光による紫色への光応答性は鎖長に応じて速くなったが、heptylSP, decylSP, octadecylSPではpentylSPと同程度であった。このうち鎖長の長いdecylSPとoctadecylSPは、蛍光灯等の弱い光によって容易に色変化を示した。 2. ジアリールエテン(DE) フッ素系PFCPとシアノ系CMTEの紫外光照射前後の開環体と閉環体の結晶に応力を作用させた。静水圧実験では、PFCPの白色結晶(開)は変化しなかったが、青色結晶(閉)には2.9GPaで退色が観察され、CMTEでは黄色結晶(開)は変化を示さないが、赤色結晶(閉)は1.5GPa付近から橙色に変化し、より高い圧力では黄色味を帯びた。このようにDEは応力によって閉環体から開環体への異性化を起こすことが明らかとなった。これは、SPの応力によるMCの誘起と共通している。一方、ずれ応力ではいずれの結晶も明瞭な色の変化は示さなかった。これは、DEの色変化の誘起には、SPより強い応力が必要であることを示しており、ダイヤモンドアンビルを用いた赤外スペクトルの測定を始めている。
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