本年度は、アクセプター分子・トリ(フェナンスロ)ヘキサアザトリフェニレンにドナー性アミン部位を導入したドナー・アクセプター型の自己集合性2光子吸収色素の合成を遂行した。まず、市販のフェナンスレンジオンの光ブロモ化により、対応するジブロモ体を合成した。次に、芳香族ボロン酸との鈴木カプリング反応を遂行し、ドナー性アミン部位を導入したフェナンスレンジオンに誘導した。最後に、ヘキサアミノベンゼンとの縮合反応によりトリ(フェナンスロ)ヘキサアザトリフェニレンを基盤としたドナー・アクセプター分子の創製に成功した。 目的物の精製は、カラムクロマトグラフィー及び分取式高速液体クロマトグラフィーで行った。展開速度から判断して、目的物が高い自己集合能力を有することが示唆された。単離精製した目的物の同定は、各種スペクトル測定(核磁器共鳴スペクトル、赤外吸収スペクトル、質量スペクトル)及び元素分析により行った。核磁器共鳴スペクトルにおいて、自己集合に起因する顕著なブロードニングが観測された。自己集合に不利な高温条件において、スペクトルの先鋭化が進行し、帰属・同定に成功した。 吸収・蛍光スペクトル測定及び原子間力顕微鏡観察の結果より、本ドナー・アクセプター分子の自己集合特性が判明しつつある。2年目は、更なる自己集合特製の評価を遂行すると共に、2光子吸収特性の評価を行う。更に、新規ドナー・アクセプター分子の合成も引き続き展開する。
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