研究概要 |
(1)両端にフリーベースポルフィリン・亜鉛ポルフィリンを結合したピンセット型分子について、両端に正負の電荷を導入したものの合成に成功した。この分子はジクロロメタンなどの低極性の溶媒には極めて難溶であるが、一当量の酸を添加することで溶解度が大きく増大した。この挙動は、酸添加前は分子間で正負の電荷を向かい合わせるような形で凝集しており、酸添加によってその凝集が解けたものと解釈することができる。また、中性状態でもジクロロメタンにTHF、アルコールなどの高極性溶媒を添加すると溶解度が高くなり、クーロン力による凝集が弱められたためと考えられる。 (2)ピンセットの根元部分の接合部について、トリメチレン・シクロヘキサン-trans-ジイル・キサンテン-1,8-ジイル架橋を用いた3種類の分子を合成し、亜鉛ポルフィリンからフリーベースポルフィリンへの分子内エネルギー移動について調べた。エネルギー移動の効率はキサンテン>トリメチレン>シクロヘキサンの順となり、2つのポルフィリン間の平均距離を反映した結果となった。また、接合部が可動と考えられるトリメチレン架橋体について、両端に電荷を導入する前後のエネルギー移動効率を比較したが、有意な差は見られなかった。これらの分子について計算機シミュレーションを行ったところ、予想に反してトリメチレン架橋の化合物では2つのポルフィリンが対面型に近づく確率が少ないことが示唆された。 (3)接合部の運動性をさらに確保するため、3-オキサペンタン-1,5-ジイル、3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジイル架橋を用いた分子の合成を行った。
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